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Entrepreneur / 起業家

食を通して地域を元気に。土佐山田ショッピングセンター / 石川 靖

家業がスーパーマーケットだったという「土佐山田ショッピングセンター」の代表取締役社長 石川 靖さん。現在は、香美市物部町の三嶺のシカ食害の問題解決のため、バリュー各店の商品230品を対象に、1品の売上金から1円を「三嶺の森をまもるみんなの会」に寄付する活動も始めています。

事業を引き継いた当初のディスカウント型の店から一転、地域密着の高質スーパーマーケットへ転換されました。安さだけでなく、安心安全で質の高い商品を心のこもったサービスとともに提供することで、地域1番店を目指しています。その背景には、どんなきっかけや転機があったのか?これまでの経緯を伺いました。


土佐山田ショッピングセンター家業を継ぐために

生まれも育ちも土佐山田。実家が元々スーパーマーケットをやっていたので、なんとなく跡を継がないといかんなと思っていました。
その後、大学で大阪に行って大手スーパーマーケットに就職。入社後、たくさんの店を同じように運営するためのマニュアル(当時最高峰のチェーンストア理論)を体に叩き込まれました。

その後、実家のスーパーに帰省したときにはものすごいギャップがあるわけですね。大手のスーパーと比べると実家のスーパー方が断然面白かった。仕入れから販売まで全て自分で手掛けるので、もう“創意工夫”の連続で面白いんです。
ただ根っこはチェーンストア理論でガチガチに叩き込まれていたので、全体的なスタイルはチェーンストア理論守ろうとするんです。

基本ができていないと店は運営できないから「1、2店舗の段階からしっかり仕組み作りをせないかん」と思っていました。
ですが、それでは整なわないということが様々な体験で出てくるんです。

土佐山田ショッピングセンターデフレスパイラルに陥る。

実家に帰ってきたのが1994年くらい。ディスカウントで安く売って人を呼んでいて、すごく業績が良かったんです。
1998年が売上の最大ピーク。僕が店長に就いて、その翌年の1999年からジワジワ下がり始めました。

そのとき、「もっと安く売らないかん」という考えでした。安く売れば売るほど、ジワジワ下がっていく。
理由は必然で、高知県の人口が1996年がピーク。そこから減ってきている。“客数×客単価=売上”なので、客数が減り始めるんですよ。

もっと安く売らなきゃと価格を下げていけば客数も客単価も下がる。デフレスパイラルをまざまざと体験しました。
そこで、「安さ以外のもの」を何か付けていこうと方向転換し始めたのは2001年の時期。「バリューノア」という綺麗な店を初めて作りました。

土佐山田ショッピングセンター

地場産品の魅力に気づく。

ディスカウントのときは、とにかく安いものを仕入れて、安く売っていたんです。それでは売上が上がらない。当時牛乳が1リットル 168円で売っていました。そこへ“ひまわり牛乳”という地元の牛乳を売ることになるんです。きっかけは、地域の酪農家に「ひまわり牛乳売りやせんろうが。あれは俺らが作った乳ぞ!なんで売らんがな。」と言われたわけです(笑)

自分も子供のとき“ひまわり牛乳”で育ったし、そう言われたらと。168円の牛乳の横で、208円の“ひまわり牛乳”をしぶしぶ陳列することにしました。
最初、売れるわけがないと思っていたんです。ですが、思いとは裏腹にすごく売れて。みるみる売れて1,2年後にはウチで1番売れる牛乳になっていました。168円より高い牛乳が売れたという事実。不思議でならんがです。

「地元の商品は、何か価値があるんやな」というのはそのとき初めて感づきました。他には、香北町の生産者から「私たちの野菜を売らしてや」という話から、地産地消の向上を目的とした「山田のかかし市」というコーナーも始めて。小さな売り場でしたが人気の売り場になりました。

「山田のかかし市」が「ひまわり牛乳」のことと親和性があったんです。地域のモノは、ディスカウントのモノとは違う。お客さんが共感しゆうなというのが分かった。そこから地元の商品を売ろうと転換していきました。

土佐山田ショッピングセンター売るのではなく、伝える。

うちの次男坊のアレルギーがひどくて、アレルギー除去食を食べないといけなくなったんです。それを売っているお店は、国立病院や医科大の売店、自然食品屋さんなどでした。その後、食事を整えていくと言う先生のところに行き着いて、家族全体の食事の見直しをかけられたんです。
そのときはディスカウントが調子の良かった頃。女房がうちで全く買い物をしなくて。ジャンクだから(笑)

女房は“コープ自然派”を利用していて、カタログを見るとスーパーとは売り方が違うんですね。スーパーは商品名と値段を煽っていくわけですけれど、コープ自然派さんは「“遺伝子組換え”入っていません」「“食品添加物”、“農薬”、“化学肥料”を使ってません」「アニマルウェルフェアで育てています」とかあまり聞いたことのない言葉を訴えかけていました。こんな世界があるんやなと初めて知りました。

女房に買ってもらうために真似して品揃えするんですけれど、ディスカウント方式で商品と値段をつけて陳列しても売れないんです。誰も知らん商品だから。

キッコーマンの醤油だったら、1リットルで198円「安い!」と思って買ってくれるけれど、かめびし醤油900ミリリットルで900円。特売で780円で売っても「高ッ!」と売れんわけです。高い理由をしっかり説明していないから売れない。全然売れなかったのが、ある日突然売れ始めて。

テレビでかめびし醤油が、テレビ番組に出て、30分くらい特集組んだのを見たお客さんが買い始めるわけです。それで、“売るのではなく伝える”ということの大事さを知って、POPなど伝えていくための表現を少しずつ変えていっています。今では自然派の商品も多数取り扱っています。女房に買ってもらうのが最初のきっかけでしたけれど(笑)

土佐山田ショッピングセンター寄付つき応援に
取り組みはじめる。

バリュー内に出店していた小僧寿しが退店した後、イベントもできる憩いの場を作りました。「高知・のびのび青空キャンプin香美」(東日本大震災で、放射線に不安を抱えているご家族のための保養キャンプ)という取り組みがあるのですが、2014年頃から運営団体が資金難に陥っていました。

そこに高知市民会議の理事長が寄付つき応援のスペシャリストで間に入ってくれて、「寄付つき商品を構えて、1品の売上金から1円を団体に寄付する。共感性のあるネタであれば寄付が集まるし、取り組み自体も啓蒙活動になります。その代わり、報告会をしてください」と教えてくれました。

青空キャンプの寄付つき応援を始め、20万円近く集まった。そのお金を気持ちよく払えたので、これは凄いなと。それから毎年行ない、2015年もその団体に寄付しました。ただ2016年はキャンプ自体が見送りとなりました。

けれど「せっかくだから、寄付つき応援の仕組み自体で何かしたい。次にやるなら物部川に関することがいいね」と社内で話をしていました。そんな折、環境省の取り組みシンポジウムで「三嶺の森をまもるみんなの会」の依光先生の話がありました。

 

土佐山田ショッピングセンターシカ食害の現状に愕然とする。

関わっている生産者に連れられて、何の気なしに依光先生の話を聞きに行くんです。そしたら、「物部川が汚くなっている」「川が細っている」という話があって。その原因が源流域の鹿の食害だと初めて知るんです。20年ぶりに山に上がって、ビックリしました。何もないことに。「物部川が壊れかけちゅう!」これは酷いなと気がついたんです。

ほんで、ご縁もあって先生の教え子が新入社員として入ってきました。その子は84プロジェクトにも関わり、森林関係に問題定義を持っていたので、プロジェクトリーダーとしてこの取り組みに寄付をすることに決めました。

対象商品は、物部川は3市町村(香美市、南国市、香南市)にまたがっているので、その3市町村の商品を中心として、各店230品を対象に、1品の売上金から1円を「三嶺の森をまもるみんなの会」に寄付する活動を始めました。ありがたいことに半月程で、10万円が集まりました。報告会も定期的に行っています。今後もこの活動を継続していく予定です。

土佐山田ショッピングセンター食文化を育てていきたい。

現在は「食の勉強会」を企画し、社員とお客さん一緒に聞いてもらったりしています。自然派の食品は、知識がないと理解されない。「なんでこんなに高いの?」と聞かれた場合の答え方をしっかり学ばなければいけない。従業員さんが腑に落ちるまでに時間がかかりますね。

料理の「さしすせそ」をしっかり使いこなせば、家計には響かないはずなんです。非常に経済的に収まるはずなんですけれど、簡単便利で安く、料理用途に合わせて使える調味料に流れてしまう。けれど、その方が割高なんです。そういった調味料は、材料もたくさんロスやゴミを抱えてしまう不条理を招く。

それをスーパーマーケットや大手販売店も煽っているので、食を整えていく活動がお店にないといけない。そのために料理教室もしていきたいと考えています。ある中学生の親御さんにも言われたのですが、家族や大切な人のために料理を作ろうと思ったら、コンビニやドラッグストアはいかんと思うがです。

料理をする人を応援するのが、私たちの仕事やと思っています。それと同時に、地域の農業を支えていくのも仕事。できる限り地元の野菜を売っていくことを大事にしていく。
それから、食をちゃんと整えていくサポートもやっていきたい。どこまで行き着いても食が付いてくるので、食を通して地域を良くしていきたい。社内では、三愛主義「売り手よし、買い手よし、社会よし」の経営で少しずつ年輪のように成長できたらと考えています。

全国チェーンのスーパーマーケットとは違い、地方には地域のスーパーマーケットの役割があるはず。その方法を今後も模索しながら、新たにチャレンジしていきたい。


インタビュー後記

石川さんは、「スーパーを地域の情報が共有できる場にしたい」「身近な自然の現状をもっと知ってほしい」という熱い想いを持ち、事業に邁進されています。
「“ディスカウント型”から“地域密着型”へ方向転換する過程で、本当に売れなくて苦しい時期があった。ただ事業をする上で、お客さんの反応がダイレクトに数字に表れてくるので、この週末トライしたことがダメだった、なら次の週末に向けてどうしようと検証して仮説を立てて、やったらまた答えが出てくる。それはそれで面白い」と笑顔で話されていました。

 

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