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吉村義文(EVERS LINK)|見て見ぬ振りはできなかった。犬猫殺処分ゼロへ。

エバースリンク(EVERS LINK) / 吉村義文

殺処分ゼロを掲げ、犬猫の命を繋いでいる一般社団法人「EVERS LINK(エヴァーズリンク)」代表理事の吉村義文(よしむらよしふみ)さん。活動から1,000匹近くの犬猫の譲渡に関わり、命をつなぐために今も精力的に活動されています。なぜ吉村さんは動物愛護の活動を始め、今も続けられているのでしょうか。

無類の動物好き。

エバースリンク(EVERS LINK) / 吉村義文

幼い頃から動物が好きでした。しかし、アパート暮らしのため動物は飼えませんでした。
それにもかかわらず、土手で見かけた子犬とかドブネズミの子供とかを連れて帰ってました(笑) 当然母からはその度に「捨ててきなさい」「戻してきなさい」とか言われてましたね。

なので飼うことはできなかったのですが、母親の実家には、犬、猫、ニワトリ、馬などの動物が沢山いたし、親戚の家も犬や猫を飼っていたので動物に触れる機会は多くありました。

当時は、ドキュメンタリー番組「野生の王国」とか、動物アニメ「あらいぐまラスカル」、海外ドラマ「名犬ラッシー」や「わんぱくフリッパー」など、動物にまつわるものが好きでよく見てました。

結局自分で犬が飼えたのは、37歳頃。それまでは環境やタイミングもあって飼っていませんでした。

義父が亡くなり帰省。

18歳の夏冬と腎臓の病気で入院、そのため卒業式は外出許可もらって出席し、卒業後も少し入院生活が続きました。退院後は大阪の内定先を断わってたので、しばらく地元で働くことに。

その後、長距離トラックの運転手だった義父の紹介で、大阪府にある運送会社に就職しましたが、違う仕事がしたくなり運送会社を辞職。

ブランド物のアパレル、貴金属、宝石、毛皮など高級品を扱う会社で販売及び営業をして、いわゆるバブル時期を過ごしました。毛皮の製造過程を知った今では、毛皮はありえませんね…。
ちなみに運送会社時代にアパート全焼の火事にもあってたりして、わりと経験豊富です(笑)

28歳のときに、母よりも若かった義父が癌で亡くなりました。僕は3人妹弟なんですが、そのときは3人とも県外で暮らしていて、長男の僕はそのタイミングで大阪から地元の宿毛市に戻りました。

帰省後は、量販店の電気屋さんや建材の機械加工の仕事をしていました。
その後、母親が洋裁の仕事をしていた関係で、ブティックを引き継ぐことになり、母と一緒にブティックを経営していました。

 

動物愛護週間をきっかけに。

2009年9月末(動物愛護週間)に、たまたま滝川クリステルさんの「ニュースJapan」で、3日に渡って「命の現場」という動物の殺処分の現状やペットショップの実態、パピーミル(子犬生産工場)等を特集していました。そこで殺処分の現実を見ました。

多くの保健所で行われている「殺処分」は、CO2(二酸化炭素)での窒息死です。
この方法は安楽死とは言いがたい残酷なもので、殺処分を受ける犬猫たちは複数頭が一度に狭い部屋に閉じ込められ、窒息の苦しみと恐怖感を味わうことになります。

飼い主のもとで幸福に一生を終えることができたはずの健康でかわいいペットたちが、悲惨な方法でその生涯を終えているのです。

僕自身、殺処分のことは知っていましたが、詳しい現実は知らなかった。 そこから「自分に何かできることはないだろうか?」と思いインターネットでいろいろ調べました 。
そして当時流行っていた「mixi」の中で5年に一度の動物愛護法改正に向けての署名活動を見つけました。当時、宿毛商工会議所青年部で会長をしてたこともあり「これぐらいやったら出来るやろう」と青年部の集まりや宿毛で開催される祭事でも署名活動をしました。

2009年の10月頃から、センターに収容された子たちの命をつなぐための活動を本格的に始めました。

1つでも助かる命があるなら。

エバースリンク(EVERS LINK) / 吉村義文

活動を始めるに当たって、四万十市(旧中村市)の小動物管理センターに見に行き、現状を知りました。そのときは2匹程しかいませんでしたが、「1週間で殺処分になる」と聞いたのです。

行ったから、どうしても気になる。
インターネットでその動きを見ていて、一匹は飼い主に戻り、もう一匹は見つかっていませんでした。

「このままでは殺処分されてしまう…。」とチラシを自作。大月町で発見された子だったので、周辺の新聞屋や郵便局、営業している各店舗にチラシを配りに行きました。

ですが、民家の人にも聞きましたが全く行き当たらず、次の日に宿毛の動物病院に聞きに行きました。 すると、「うちで診ていた子かもしれない」と飼い主に連絡してもらったら、「預け先からいなくなっている」という話で、なんとか繋がりました!

もし自分が動いていなかったら、殺処分になっていました。

動いたことで、命が繋がった。経験したからこそ、もう「辞めるに辞めれない」という感じです(笑)

100回やって1つしか助けられないかもしれない。でも、やらなければ0(ゼロ)です。だから、「やれば1つでも命が助かる可能性がある」と思いやり続けてます。

 

譲渡の間口を広げるために。

2009年頃は、高知県では譲渡候補犬(2〜3匹)以外の譲渡を行なっておらず、「一般譲渡の流れを作ってないので譲渡できません」ということでした。

県の担当者やセンターには「飼い手も犬にも問題が無いのに、なんで渡せないの?」「殺処分させないための受け皿も作ってる。それなのに、譲渡できない理由が分からんわ!」と訴えていました。そこは諦めませんでしたね。なので、県の担当者やセンターからは嫌われていたと思います(笑)

翌年4月に「譲渡の仕組みを作るまでは譲渡出来ない」という話で、時には理不尽な話に声を荒げつつ、やり取りを繰り返しながら特例で譲渡してもらってました。

2010年4月からは迷子犬の譲渡が出来るようになりましたが、持ち込みの子は譲渡できないままでした。飼い主になりたい人が見つかっても持ち込み犬の譲渡の仕組みがなかったのです。

※元の飼い主のことを気遣い、県は公になることを避けていました。そのため、持ち込まれた犬猫は日の目を見ることなく、当日もしくは翌日には殺処分されていたのです。

結局、持ち込みの子も勝手に撮影してチラシに載せ、引き取りの申し出があれば、保健所から犬を持ち込んだ元の飼い主と直接話ができるよう連絡を取ってもらい、譲渡をすることを前提に直接お会いして返還手続きを取ってもらいました。その後、センターに委任状を持っていき犬を引き出し希望者に直接譲渡していました。

現在は、迷子犬や持ち込みの区別はなく、同様にホームページにも掲載され譲渡できるようになってます。

協力してくれた方々のおかげで。

僕が活動をはじめた当初は、チラシに「殺処分」と書いてるため、抵抗感を持たれた方達もいました。よく思われず、チラシを貼ることを断られたこともありました。
活動を続ける中で、心無い誹謗中傷を受けることもありますが、支えてくださる方も多いです。

チラシは全て自作して配っていましたが、ありがたいことに少しずつ思いに共感してくれた方や飼い主になってくれた方が協力してくださるようになりました。

高知市や須崎市などの協力者や団体さんにデータを送り、送り先の人が同じように声をかけて配布してくださるように。活動当初から数年間はチラシから繋がっていきました。

一人で活動していましたが、周りの方々が協力してくださったおかげで広がってきました。

活動に専念するために。

エバースリンク(EVERS LINK) / 吉村義文

動物愛護の活動に専念するあまり、経済的な問題も出てきました。丸一日、センターや譲渡先の方とやり取りしたり、高知県内や県外へも動かなければならない。

母と経営していたブティックも立ち行かず、就職活動もしていましたが、年齢も40歳を超えていたので就職先もなかなか決まらない状態でした。

そんな折、facebookを通じて「吉村さんが活動の量を減らすと、助かる子も助からなくなる」と支援してくださる人が現れたのです。

そこからグッズ販売を始め、支援者も増えてきたことで経済的にはギリギリですが、どうにか活動を続けられました。

2009年の活動を始める少し前に離婚しているのですが、後々考えたら、家族がいたら今の活動はできていなかったと思います(笑)

Facebookを通して全国に。

2014年頃からは「 Facebook」を通して発信し、徐々に全国から声がかかるようになりました。

女優で動物愛護活動も行なっている浅田美代子さんに「Facebook」に投稿した動画をシェアされたことをきっかけにさらに広がり、他の動物愛護団体ともつながるように。
そのときの動画「見つけてくれてありがとう!〜ある老犬のメッセージ〜」はYouTubeにアップし、わんちゃんホンポ、grape、petfunや各ブログなど多数のメディアに取り上げていただいています。

第三者譲渡で県外の人にも引き渡せるようになりましたが、最初は直接来高してもらう必要がありました。現在は、こちらから搬送したり空輸などで対応することもあります。

県外の譲渡希望者のほとんどが犬を直接見ていないため画像や動画、詳細を伝え判断してもらってます。

こちらも譲渡希望者と直接会えてないので、電話でいろいろと確認させてもらうと共に、個人情報の証明出来るものや飼育環境、自宅周辺の環境などを画像や動画で送ってもらってます。

※関西圏までは車で直接届ける事が多いですが、関西より遠い場合は空輸で送るようにしています。

怪我をした犬猫も
受け入れる体制を。

エバースリンク(EVERS LINK) / 吉村義文

怪我をした犬猫がセンターに入っても5日間の保護期限があり、その間はどんな怪我をした子でも診察するだけで治療はできず、その間に死んでしまう子もいました。

県や市は「決まりなので仕方ない」で終わらせてましたが、僕は「どうにか期限内に治療を受けさすために」と働きかけ、現在は収容当日でも治療預かりとして引き出せるようになりました。

僕自身が治療費まで全て負担できる訳では無いので、光を当てることで支援してくれる人を募りました。
ありがたいことに、「治療費を出すから治療してあげてほしい」と連絡をくれる人や、「自分が引き取ることを前提に、医療費を出すので病院に連れて行ってください」という方達がいらっしゃいました。

そして、高知の動物病院「アリスペットクリニック(以下アリス)」が「動物愛護の活動に協力したい」と声をかけてくださりました。

おかげで、さらに裾野が広がりました。 アリスから「協力したい」と言ってもらえたときは、とても有り難く、嬉しい思いでした。
ただ、多くの犬猫が助かるほどに、アリスの負担も増えるので心苦しさも感じていました。

任せきりではなく、寄付を集めて運営していくため、2017年11月22日に一般社団法人「EVERS LINK」として形を整えました。

アリスと出会って連携を取り始めてからは、センターに入った当日にアリスで預かり、治療する流れができました。
そのおかげで、今まで助けれなかった子達を助けれています。

動物が好きだからこそ。

エバースリンク(EVERS LINK) / 吉村義文

活動をはじめたときに、高知に犬の動物愛護団体のようなものがなかったので、とりあえず「自らが動こう」と思いました。

誰かにやらされているわけでもなく、自分が好きで勝手にやっている。だからこそ長続きしているんだと思います。

動物好きというのもありますが、ただ保健所に入っているだけで「殺処分」というものがなければ、今の活動はしていません。

殺処分の現実を知ったからこそ、「殺処分させたくない」と強く思いました。
殺処分されてしまった子たちも、みんな悪い子たちじゃありませんでした。知っている子たちが殺処分されていくのは、本当に辛かった…。

その子たちが殺処分されるのは、ただ「居場所がない」という理由だけなのです。

殺処分の問題と向き合い続ける。

エバースリンク(EVERS LINK) / 吉村義文

殺処分されるまでの原因をたどると、解決していかなければいけない問題が山積みです。

「旅行に行くから」「大きくなったから」「いうこと聞かないから」「子供ができたから」など身勝手な理由で捨てる方もいます。
飼うからには、最後まで責任を持って面倒を見てもらいたい。

飼えなくなくなったら、すぐに保健所に行くのではなく、自分で引き取り手を探してもらいたいです。

飼い主さんが独居老人で病院や施設に入ることになり、飼いたいけど飼えないという事情でセンターに持ち込まれる子たちもいます。
高知は高齢化も進んでいてこういう事がますます増えると思うので、対応策も考えていかなければいけません。

そして、ペットショップの生体販売の問題です。
まともなブリーダーであれば問題ないのですが、中には子犬生産工場と呼ばれるような日も当たらないような場所で身動きも取れないまま、糞尿まみれの小さなゲージに入れられ、爪も伸びっぱなし、病気をしても治療もされずにいる子達がいます。そして、その繁殖犬は何度も交配させ、子犬を産ませているのが現状です。

ペットショップにとっては商品であり、物扱いなのです。売れ残れば、どうなるのかわかりません。でも、需要がある限り、何度でも繰り返されていくのです。

現在、僕が関わった犬猫は、老齢や病気で手術に耐えられないような状態の子以外は、すべて避妊去勢してマイクロチップを打っています。そして、その登録名を僕から変えない事が前提なので、何かあったときには、僕に情報が入ってきます。
※マイクロチップは獣医師会に登録します。
※市町村に行う畜犬登録はもちろん飼い主さんに登録名を変更してもらいます。

避妊去勢をすることで、数を増やすことを抑制できます。マイクロチップを打つことで、飼い主を特定することができるのです。

今は義務化されていないので、飼い主さんの選択が大切です。

特に高知県は今後、南海地震が来ると言われてます。そして今は豪雨災害も多くありますので、他人ごとではありません。

被害を受け離れ離れになってしまったとき、可愛い我が子たちを路頭に迷わすことのないよう、また再会するためにもマイクロチップの装着を推めます。

理想は、僕たちがしている活動がなくなること。
殺処分につながる要素を少しでも無くしていくために、これからも活動を続けていきます。

関わった子たちの幸せな姿を
見ることが何よりの喜び。

エバースリンク(EVERS LINK) / 吉村義文

僕がいなくなれば、今の活動も無くなってしまうので、後に続く人も作らなければいけないと思っています。

今までは一人で活動している分、譲渡の活動に追われてしまい、他の活動があまりできていませんでした。

今後は殺処分を無くすための啓発活動も進めていきたい。自ら出向いて発信していくことにも力を入れていきたいと思ってます。この前の浅田美代子さん高知講演の二部では美代子さん、アリスの先生、そして僕と3人でお話しさせていただきました。

新しい飼い主さんから写真や動画を送ってもらって、引き取られた子たちが幸せに暮らしている姿を見ると何より嬉しいです。

「居場所がない」という理由だけで殺処分させたくない。

犬猫たちが当たり前に生きられるように、そして幸せに生きてもらうために、今日も自分ができることをがんばります。


編集後記

数年前まで犬猫の殺処分数が全国トップだった高知県。2017年度に高知県内で殺処分された犬の数は19匹で、10年前の1694匹から90分の1に激減しています。

取材の撮影場所には、吉村さんが命を救った犬たちがケージの中に集まっていました。吉村さんが来ると、しっぽを振り回し飛び跳ねてよろこぶ犬たちの姿が印象的でした。おかげで吉村さんはあっという間に土まみれに(笑)

居場所がないという理由だけで殺処分される現実に目を背けず、命を繋ぐために全力で活動されている吉村さんの真摯な生き方に感服しました。

吉村義文さんへのお問い合わせは以下からご連絡ください。

Phone:090-8695-6797
Facebook:吉村義文