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高知のワイン会をより活発に|神職・名誉ソムリエ 吉良祝人

高知のワイン会をより活発に|神職・名誉ソムリエ 吉良祝人

神職(神道大教高知中教院 院長・天満天神宮 宮司・王子神社 宮司)の傍ら、「名誉ソムリエ(※)」としても活躍されている吉良祝人さんを取材させていただきました。

吉良さんは、16歳で神職の資格を取り、神社に奉職。仕事とは全く関係無いワインに興味を持ち、高知県でのワインを広める活動が認められ、史上最年少(36歳)で日本ソムリエ協会から「名誉ソムリエ」を叙任されています。

現在はフランスから生産者を招いてのワインパーティーを催す他、ソムリエやワインエキスパートを育てる教室を開催。「ワインは趣味」という吉良さんにワインに魅せられていった背景や、今の活動の原点についてお話を伺いました。

※一般社団法人日本ソムリエ協会が認定いたしております「名誉ソムリエ」の称号です。国内外においてワイン、日本酒などの飲み物の普及とソムリエの育成に功績のあった方、また今後飲食業界ならびに協会の発展のためにご尽力いただける著名な方々を各方面よりご推薦頂き、当協会認証委員会において検討のうえ認定させていただいております。via:一般社団法人日本ソムリエ協会

将来は祖父の仕事を継ぎたい。

生まれは高知市で、元々は春野町にあった「吉良城」土佐吉良氏(土佐七雄の一つ)の子孫です。祖父は山内神社の宮司をしていました。

私が幼稚園児の頃、祖父が弟に次の代を譲りたいという話をしていたそうです。そのときのことを覚えていないのですが、私はその話を聞いて「それは違う。僕が継ぐ」と言って祈り出したみたいで(笑) その様子を見た祖父は「孫が継ぐみたいやき。すまん。もうちょっと頑張るわ」と言っていたそうです(笑)

母も神職で母子家庭でした。お通夜(仕事)が入ったら、母の帰りが19時過ぎになるので、よく外食していました。
行きつけのお店は、IHARA  井原尚徳シェフが働いていた松本洋明シェフが営むイタリアン「Villa・Vitis(ヴィラ・ヴィティス)」。
私は未成年でしたが、母はワインを飲んでいました。よく母の友達の家にも遊びに行って、家族ぐるみで食事をしていたのですが、いつも母が飲んでいるお酒はワインだったのは印象に残っています。

16歳で神職の資格を取得。

元々、実家が神社なので、いつかは神職の資格を取らなければと思っていました。ただ、神職の資格を取るのは思ったよりも大分早かったです(笑)

神職の資格を取ったのは高校1年のとき。母に「ディズニーランドに連れてっちゃる」と言われて、東京に連れて行ってもらったら、都内の神社の前で「じゃあね。1週間後に迎えにくるわ!」と置いていかれて…(苦笑)

それから神社で朝から晩まで、1週間一気に詰め込まれました。幸い、若かったこともあって吸収が早く、4日目になる頃には人に教えていました(笑)

他に神職の資格を取りに来られる方は、退職後、70歳前後の方が来られることが多いんです。資格を取るのはかなり早かったですが、年功序列の業界なので、今思えば、あのとき資格を取っておいて良かったなと思っています。

初仕事から大舞台の連続。

神職の資格を取得後、一番最初にした仕事は大舞台でした。
高知県図書館前にある山内一豊 騎馬像の除幕式だったので、TVメディアもたくさん来るし、大人も大勢いる大変な現場でした。祖父が山内神社の宮司をしていたので、「山内家のお祭りは手伝いに来い」と祖父に言われ、2人で執り行いました。

「こんな祭りは滅多にない」と言われていましたが、2回目の仕事はもっと大きなイベントで、表千家(千利休を祖とする千家の家督を継いだ千家流茶道の本家)の家元が高知に来て、表千家のお弟子さんが全国から集まる数百人規模のイベントでした。

その他にも山内神社の祭事は華やかなイベントが多く、山内家のNHK大河ドラマ「功名が辻 」では主役(山内一豊の妻・千代)の仲間由紀恵さんはじめ、皆さんの安全祈願もさせていただきました。
長浜に「一領具足供養の」があるのですが、山内一豊が入国した際に対立し、討ち取られた長宗我部氏の一領具足たち(273人)の碑があるんです。それまで慰霊祭は行っていなかったのですが、山内一豊役だった上川隆也さんが「慰霊祭をしてもらいたい」ということで、上川隆也さんと一緒に慰霊祭をしに行ったこともありました。

今、私が院長を務めている「神道大教高知中教院」は、葬儀がメインなのでお祝い事は少ない。神職は今あるものをなるべく変えずに続けていく仕事なので、その後は大きな出来事はありませんでした。

神職は毎日正座なので運動不足になりがち。社会人になってからフットサルを始めて体力がついて、お墓に上がるのが楽になりました(笑)

大学卒業後も仕事に追われる日々。

高知のワイン会をより活発に|神職・名誉ソムリエ 吉良祝人

高校卒業後は、神職の一番高い位「明階」「少教正」を取るために「國學院大學 神道文化学部」に進学。
在学時には神職の資格を取った神社へ手伝いに行ったり、夏休みになれば帰省して「修祓:しゅばつ(葬儀のお祓い)」に行ったり、山内神社で結婚式のご祈祷をしたりと仕事に追われていました。

高校生の頃から「ベルモニー会館」や「四国葬祭」で葬儀を執り行っていたのですが、大学時に初めて喪主の自宅で葬儀を執り行いました。
最初は母と祖父と私の3人でご自宅に伺ったのですが、私は童顔だったので「子どもがきたで?」と言われたりして(笑) 最初はびっくりされましたが、祖父にも認められ、2回目からは一人で行かせてもらえるようになりました。

大学卒業後、他の神社に行く選択肢もあったのですが、中教院での葬儀の仕事が忙しく、帰省後も仕事に追われていました。

ワイン魅力に惹き込まれて…。

ワインを飲み出したのは二十歳から。母がワインをよく飲んでいて、種類も豊富だったことからワインを好んで飲んでいました。
ワインを真剣に飲むきっかけを与えてくれたのは、高知市のワインバー「paroles et musique(パロレ・エ・ムジーク)」のシニアソムリエ 吉村泰紀さん。高新文化教室の講師もされていて、ワインにまつわる基礎知識やマナーを教えていただきました。

イタリアン「ヴィラ・ヴィティス」の松本シェフには、ボルドーの5シャトーやスペインのウニコなど高級ワインを色々と飲ませていただき、ワインのアタックから余韻までの印象など、独特な表現で教えていただきました。

ワインと向き合い始めた頃、高知市にワインバー「Vinvino(ヴァンヴィーノ)」がオープン。たまたまオープン初日に母と飲みに行きました。
カウンターでオーナーの岡崎さんと話をしていて、飲んだワインについてコメントすると、「まさにその通り! 深い色味にチョコレートとミントの香り、カリフォルニアのワインはまさにその香りですよ!」と感激されて、ますますワインの沼にハマっていきました(笑)

史上最年少で名誉ソムリエに叙任。

高知のワイン会をより活発に|神職・名誉ソムリエ 吉良祝人

Hospices de Beaune(オスピス・ド・ボーヌ)2012年

高知はお酒の場で1本目のビールから始まって2本目も3本目もビールという飲み方をされる方が多い。もっと多くの人にワインの面白さを知ってもらいたいという思いから、ワイン会を開催するようになりました。

2008年にフランス ブルゴーニュへ行った際に、ドメーヌ(生産者)訪問させていただきました。その中で、ブルゴーニュの「SIMON BIZE(シモン・ビーズ)」5代目当主 千砂さんとつながりができ、「高知に来てほしい」と度々メールで連絡していました。

そんな折、千砂さんから「香川に行きます」と連絡が来て、「香川じゃなくて高知なら美味しいものがありますよ」と返すと、「じゃあ高知に行きます」と連絡をいただき、数年越しのラブコールが実って、フランスのドメーヌをお招きすることになりました。

2011年に初めて来高いただいた際には、10人ほどのワイン会を開催しました。その会で、高知でのワイン会での活動についてもお話していると、たまたま「フランスで「Cousinerie de Bourgogne (クージヌリー・ド・ブルゴーニュ)」を1枠推薦できる。来年フランスに来るならどう?」と言われて、「行きます!」と即答しました。
千砂さんは高知を気に入ってくれて、その後も数年に1度は高知に来ていただいています。
翌年(2012年)フランスに行き、高知県内におけるワインの普及活動が評価され、日本人では歴代7人目、当時33歳でフランスの「Cousinerie de Bourgogne(クージヌリー・ド・ブルゴーニュ)」に叙任いただきました。

Cousinerie de Bourgogne(クージヌリー・ド・ブルゴーニュ)に叙任されたことで箔が付き、100人以上の方が集まるワイン会を開催できるようになりました。趣味でやっていることなので、公的に認められたのは嬉しかったですね。それからはワインを勉強する方向から、ワインを教えていく方向へ徐々にシフトしていきました。

2015年には、二十歳の頃からお世話になっていたワインバー「パロレ・エ・ムジーク」の吉村さんに推薦いただき、史上最年少(当時36歳)で「名誉ソムリエ」の称号をいただきました。

フランスから生産者を招いた
西日本最大のワイン会を開催。

高知のワイン会をより活発に|神職・名誉ソムリエ 吉良祝人

高知県内の大きなワイン会の多くは私が取りまとめています。インポーター(輸入業者)さんの試飲会を開催する際には、インポーターさんと酒屋さんと私の3人で話をして、どんなアイテムにするのかを決めていきます。

2017年には、フランスの生産者を招いたワイン会を開催しました。西日本で最大、160人規模のワイン会を開催しました。15,000円のワイン会に160人も来たので、全国的に見ても相当大きかったと思います。

コロナ禍になって過去に立ち上げたワイン会はお医者様が多かったこともあって、いくつかのワイン会は解散になってしましました。

今定期的に開催しているワイン会は2つ。一つは、飲食店の方を中心に毎月10人ほどのワイン会。各メンバーで秘蔵のワインを持ち寄って、ワインについて教え合いながら、みんなで楽しんでいます。

もう一つは、10数名のワイン教室です。会員さんの一人は日本ソムリエ協会が認定する「ワインソムリエ」に合格し、「ワインエキスパート」も取得しました。ワイン検定では「ブロンズクラス」も「シルバークラス」も全員が取得したので、ワイン教室はエキスパートを取った方に任せています。

これからも高知でワイン会を作って、メンバーの中で誰かエキスパートになったら、他の方に任せようかなと考えています。
またワイン会を増やして、ワインを楽しむ人を増やしたいです。

ワインは一生楽しめる最高の趣味。

ビールや日本酒は去年と全く同じものを作ると思うのですが、ワインは天候によって左右されるので毎年できあがってくる味が違うんです。

同じ銘柄、同じ年のワインでも個体差がある。尚且つ、飲む時期や注ぎ方によっても味わいが変わるんです。そこが面白い。ブラインドテイスティングして、ヴィンテージ・品種・作り手がピタリと当たったら、すごくテンションが上がります(笑)

いつ飲むか、どんな料理と一緒に飲むか。誰と一緒に飲むか。いつも考えるのが楽しい。「この人だったら、このワイン喜ぶかな」と考えるのも楽しみの一つです。

知れば知るほど奥が深く、ワインの魅力に惹き込まれていく。もう、一生楽しめる最高の趣味です。

いつもワインを飲んでいるように思われがちがですが、葬儀前日には飲まないようにしています。一生に一回のことだし、毎回気合いが入ります。
葬儀は喪主さんも悲しみで気持ちが下がるので、1日2件の葬儀が入ると私も気持ちが下がってしまうんです。料理も趣味の一つで、下がった気持ちを上げるために、料理を作ってワインを飲んで、暗い気持ちはリセットしています。

高知のワイン会をより活発に。

高知のワイン会をより活発に|神職・名誉ソムリエ 吉良祝人

ワイン会では、まずはワインを飲んでもらって、知ってもらうことから始めています。ワインバー「Vinvino(ヴァンヴィーノ)」の岡崎さんが講師で、私は人集めをしています。

最初はボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュの3大名醸地から教えていきます。一番飲む回数も多く、美味しく、分かりやすい。イタリアは品種も多いので分かりづらく、飽きるかもしれないのでフランス産のワインから伝えています。

ブルゴーニュの北と南、どちらのワインなのか。南なら村ごとに特性を伝えています。
ボルドーは、左か右、左岸の赤ワインはカベルネ・ソーヴィニヨン主体のがっしりタイプ。右岸の赤ワインはメルロー主体のまろやかタイプ。
シャンパーニュ地方は、ピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・ムニエ。飲み比べながら、違いや特性を理解してもらいます。

これから先、「また行きたい」と言ってもらえるような100人規模の大きなワインパーティーを開催予定です。

最近は20代、30代の若い人もワイン会に参加してくれるようになったので、高知のワイン会をより活発にしていきたいです。


編集後記

吉良さんは若い頃、毎日のようにワインを飲んでいたので、周りから「どのくらいの種類飲んでるか数えてくれ」と言われて年間の種類を数えると年間1,000種類を超えていたそうです。
意外だったのは、自宅で一人で飲むと2杯くらいで酔ってしまうということ。吉良さん主催のワイン会では、責任感からか酔いが回りにくいそうです(笑)

吉良さん自身、ワインを通じて人との出会いに恵まれ、人の輪が広がり、ワインなくしては経験し得なかった出来事も体験してきたといいます。

どんなことでも「好き」を突き詰めれば、人生にも深みができてオモシロくなる。吉良さんへの取材を通して、改めてそう実感しました。あなたも「好き」を好き詰めてみてはいかがでしょうか。