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mowcandle(モーキャンドル)村山匡史|キャンドルを通して自然の美しさ、力強さを伝えたい。

mowcandle(モーキャンドル)村山匡史|キャンドルを通して自然の美しさ、力強さを伝えたい。

今回お話を伺ったのは、キャンドルアーティスト「mowcandle(モーキャンドル)」の村山匡史さん。「自然の美しさや力強さを街に届ける」をコンセプトに、高知の田舎(吾北村)から都会に向けてキャンドル作りを行っています。モーキャンドルが生まれるまでの経緯から、神戸進出後の成功や失敗経験、今後の展望についてお話いただきました。

キャンドルに出逢ったきっかけ。

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生まれてから小学校までは、自然に恵まれた吾北村で育ちました。山や川に行ったり、思いっきり遊んでいました。小学1年から高知市内へ移り住んで、小学校(小高坂)から中学(城北)までサッカーと釣りに夢中になっていました。

高校(東工業)からバイクにハマり、車整備の仕事がしたくて専門学校(龍馬学園)のオートメカニック科に入学。卒業後は、車屋さんに就職して5年ほど働いて辞めました。「自分のやりたいことはコレではないな」と思ったんです。
車やバイクは好きだけど、仕事としてやるのは違うと感じてしまって。お客さんとの接客は好きだったのですが、仕事への不満も感じていました。「自分のやりたいように仕事がしたい。自営業やったら自分がやりたいようにできるかもしれんな」と思ったんです。

「何かやりたいこと見つかるかな?」と思って、1ヶ月間、バックパッカーで沖縄を巡ったんです。そのときに出会ったキャンドルを買って帰って、「キャンドル、作れないかな?」と思ったことが最初でした。「自分で作ったものを、自分で売りたい」という思いが漠然とあったんです。ただ、一番最初に作ったときは、キャンドル作りを仕事にするつもりはなかったです。

キャンドルで、初めて人を感動させた。

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その後、見よう見真似でキャンドルを作り始めました。独学でやり方も分からない中、ずーっと毎日試行錯誤。「どうやって作るがやろう?」失敗しながらも、一つ一つ課題をクリアしていきました。

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最初に作ったのは、紙コップを型にした小さなキャンドル。それがえらい綺麗で、「これめちゃくちゃきれいやな」と感動してしまって…。

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その日からキャンドル作りに夢中になって、1ヶ月後には40個くらい作りました。「このキャンドルで、友達らぁをビビらせちゃお!」と思うて、友達に「ウチで飲もうや!」と誘いました。自分で作ったキャンドルをいろんなところに並べて待ち構えていて、最初は「バカにされるかな…」と思っていました。車屋さんの友達とか、あまりお洒落な奴らが全然おらんかったき(笑)

実際に来たら、友達みんなが「うわぁ…!!」って感動しちょって。結構、意外な反応がかえってきたんです(笑)

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「あれ? 今まで生きてきて、人を感動させたことなかったな…」と思って(笑)
「思い切って、ここで人生をキャンドルに賭けてみよう!」と決意しました。

それが2008年2月で「mowcandle(モーキャンドル)」の始まりでした。キャンドル作りを始めて3ヶ月後くらいの話です。

「モーキャンドル」が生まれてから。

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「mowcandle(モーキャンドル)」の由来は、「もーちゃん」という僕のあだ名(口癖が「も〜」ということから)です。もーちゃんが作るキャンドルで、モーキャンドル。自分でカッコイイ名前も考えたんですけど、「絶対やめといた方がえいで」とみんなに言われました。「あ、みんなに言われるがやと思いましたけどね(笑)」

ただ、資金がない。けれども、僕の愛車(ハーレー)がありました。ハーレーは高く売れる。当時、140万くらいで愛車を手放して、蝋燭メーカーに電話して、「大量に買うんで量販してください」と依頼しました。

それが最初の資金。少しの資金と実家にお世話になりながら始めました。最初の半年間はしんどかったです。

大量に買った材料を元手に大きいキャンドルを作って、結婚式などのイベントに行き出しました。頼まれたら、なんでもやりました。結婚式、オールナイトのパーティー等々、「勉強も兼ねて、ギャラを貰えるやったらやろう!」という感じで、いくらお金をもらっていいかも分からない状況で(笑)

2008年末には、高知県が主催する冬のライトアップのイベントでキャンドルをやらせてもらったり。キャンドルをやっている人がほとんどいなかったので、「K+」や「高知新聞」にも取り上げてもらいました。

吾北村の美しい自然に救われた。

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一気に売上も上がっていったんですけど、「自分がやりたいのは、コレじゃないがよね」と感じていました。
それで、2009年1月に吾北村にある倉庫(現在の店舗)で、久々にくつろぐことにしました。暖かい昼時からソファに座って、ゆったり過ごしていたら、「気持ちいいなぁ。いい時間やな…。もしかして…、この時間が必要かもしれん…!」と思いました。

吾北村の時間軸がすごく心地良い…。夕方に「ウーッ」てサイレンが鳴ったり、川に行ったら鳥や魚がおって、石や川の水がすごく綺麗で、単純に救われたんです。感動して、心底いいなと思ったんです。だから、この良さをキャンドルを通して伝えたいと思いました。

元々、吾北村の自然がすごく好きなんです。それはモーキャンドルを立ち上げた2009年から変わっていない。それまで、機械みたいに依頼されたことをやっていて、忙殺されていました。「全然楽しくもないし、これじゃ続けていけん。自分ももたないな」と思ったんです。

「よし、ここ(吾北村)でキャンドルを作り直そう!」と思い立ち、2009年3月18日に店舗(吾北村)をオープン。6年くらい店舗を運営して、土日祝は結婚式やイベントのデコレーションをしていました。

「モーキャンドル」神戸へ初出店。

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mowcandle 神戸店|via:@mowcandle

2013年には神戸に出店。神戸への出店を決めたのは、完全にノリです(笑)
「おもろそうやで!」みたいな軽い気持ちで(笑)ずっと山にいたので、街に出たいなーと(笑)

「高知から近い都会ってどこやろう?」と考えて浮かんだの神戸でした。ツテも全くない状態で、物件を見に行って、その日に決めました。お店を構えたのは、神戸の中でもセレブな街といわれる岡本。

開店当初、接客すると「これ何?キャンドル?ふーん」で終わるんです。通用せんがやなと。そこで現実を突きつけられました。最初は相手にしてくれないところから始めました。

神戸の友達もどんどんできて、仲間がつないでくれたりしてくれて。徐々にキャンドルの輪が広がっていきました。お店以外では、ナイトパーティや野外フェスのデコレーションをやっていました。

その後、神戸で僕にとって大きなターニングポイントになる出来事が起きたんです。

神戸の高級エリアでキャンドルを灯す。

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KITANO CLUB SOLA|via:@mowcandle

仲の良いフラダンサーのHARUYOさん(東京とハワイを行き来しているフラダンサー)から、「神戸の北野(高級エリア)で、ディナーショーやるからもーちゃんキャンドルやってよ!」と言われて、「わかりました!」と二つ返事しました。

その人も変っている人で、色黒で刺青が入っていて、めっちゃイカツイ感じのフラダンサーなんです(笑)
最初は、「ロックな人たちの集まりながかな?」と思ってたんです。「そしたら僕、一回現地の人と打ち合わせしますね」と言って、ハイエースで打ち合わせのため現場に向かいました。

現場に着いたら、驚くほどハイクラスな会場(北野クラブ sola)で、場違い感が半端なかった(笑) 関西でもトップ3に入る超高級ラインのClef du Reve(クレ・ドゥ・レーブ)という大きい会社でした。

それがちょうどイベントの1ヶ月前で、「待てよ? こんな場所で灯すの、一生に一回あるかないかやな。ちょっと気合入れて、デコレーションやってみようかな…」と思って、全身全霊込めて、やってやろうと決めました。ひたすら1ヶ月間、そこのパーティでやるデコレーションを作り込んだんです。大きいキャンドルをキレイにデコレーションして。ハワイのキラウエア火山のイメージで、約4m幅に150本くらいのキャンドルを作りました。

当日、準備の段階でキャンドルを灯すと、支配人が「なんだこれ…。こんなの、見たことない…!」とかなり気に入ってくれて。「お前すごいな! ちょっとウチでやるか。プラン組もうぜ!」と。その日にプランの提案を受けたんです。

価値を見い出してくれた体験。

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KITANO CLUB SOLA|via:@mowcandle

その夜の出来事で、すべてが変わりました。そこから、「ザ・リッツ・カールトン」のパーティーデコレーションを依頼されたり。どんどんデカい依頼を受けるようになりました。

最初に見積を出させてもらった時に、「これもらいすぎかな?」と思いよったけど、「もーちゃん、これはいかんわ。安すぎるわ。もっかいちゃんと出しなおして。もーちゃん、そんな価値やないで」と言ってくれて。「安すぎる!?  まぁまぁもらいゆうがやけどな」と笑ってしまって(笑)

「全然違う世界が存在したがやな。今まで、自分の価値と評価がわけ分からんなっちょったがかな? 自分で思っていた価値じゃないがや! もっと価値があるものを見てくれる人がおったら、それに価値を出してくれるがや!」というのを、そのときに感じました。

それが一番人生で、モーキャンドルとして大きい出来事でした。大きな場所に認められたというのは、自分の中でめっちゃ自信になりました。

神戸時代は、本当にいろんな場所で灯させてもらいました。セレブや、芦屋(あしや)のマダムのホームパーティのデコレーション。高知だと絶対に考えられない世界を見させてもらいました。今も継続して神戸でお世話になっているので、有り難いです。

高知の山奥からキャンドルを届ける。

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ザ・リッツ・カールトン京都|via:@mowcandle

高知にUターンして、改めて店舗(リニューアルオープン)を開こう思ったきっかけは、「ザ・リッツ・カールトン京都」でデコレーションさせてもらったとき。「モーキャンドルは高知のブランドですよね? でも神戸にいるんだよね?」とめちゃくちゃ突っ込まれて。「いや違うんですよ」と言えない。応えを返せませんでした。

「いかん! もう一回、山で作り直して都会に持っていく。それは絶対やらないかんがやな」と感じました。もう一つ、気づかさせれたことがあります。
パーティーの最後に、みんなでキャンドルを囲んで、「やっぱり火っていいよねー」って言っていて。「あ、これキャンプファイヤーと一緒や。キャンドルは、街でできる唯一の焚き火やな」とそのときに確信したんです! だからこそ、僕は高知の山に帰って来てでも、街に届けたいと思いました。

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WEDDING CANDLE|via:@mowcandle

神戸ではパーティーの方で売上を上げていて、店舗自体は4年半運営しましたが、赤字続きで事業としては失敗。そのおかげで、大事なことに気づけたかなと思います。

キャンドルで、もっと自然な表現をする。どこまで行っても、自然の美しさをキャンドルが超えることはできない。それを僕は言い続ける。都会の人が空を見たり、近くの公園行って、木の温もりに触れたり、砂場で裸足になったり。自然に目を向けるきっかけになれば嬉しいです。

「自分にしか作れないモノは何か?」を考えると、やっぱり仁淀川の流れる吾北村の自然なんです。都会の街で灯したことがきっかけで、「岩や石、木や花、自然の美しさや力強さを街に届ける」という大きなコンセプトが生まれました。

キャンドルに込めたメッセージ。

mowcandle(モーキャンドル)村山匡史|キャンドルを通して自然の美しさ、力強さを伝えたい。

mowcandle(モーキャンドル)は、自然にインスパイアされたキャンドルを作っています。
「石」から生まれた作品は、石のようにロウを堆積させて転がして作っているんです。川の石を見て、自然に美しい石ができたことの素晴らしさを伝えたい。

「どうやって伝えよう? 一回石の気持ちになってみようかな?」と思って、石ができるまでの過程を辿ってみたんです。実際に作ってみると石の気持ちに近づける。感情移入できるんです。作品作りは、そうやって作っています。

mowcandle(モーキャンドル)村山匡史|キャンドルを通して自然の美しさ、力強さを伝えたい。

キャンドルは、インスピレーションで作ることが多いです。「花」から生まれた作品は、花びらがヒビ割れているんです。これ、キャンドルを作るときにできた端材だけで作っているんです。

吾北村でも良い季節になると、綺麗な花が咲きます。でも花は、枯れると花びらが落ちる。そしたら、みんなが写真を撮らなくなる。「あれ? さっきまで咲いちょったのに、落ちたらダメながかな? 綺麗な形じゃないとダメながかな? これ、作品でちゃんと伝えちゃった方がいんじゃないかな?」と思って作りました。

あ、綺麗じゃなくなった。じゃあ終わり。じゃなくて、落ちるということ、これも自然の一つの美しさ。と考えた方が豊かになる。というメッセージを込めています。そう考えた方が豊かになると思うんです。自然からインスパイアされた作品は、全てにメッセージ性があります。

キャンドルを、より身近に。

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今後チャレンジしていきたいこと、まずはお店作りです。キャンドルに限らず、自分が良いと思ったものをつなげていきたい。火鉢を囲んでくつろげるスペースだったり、キャンドルを中心にくつろぎの空間や文化を作っていきたいです。

というのも、キャンドル自体がどんどん下火になってきています。ほとんどの人は使わないんです。5年くらい前に、「なんで使わんがやろ?」と考え出したのがきっかけです。

綺麗なキャンドルを作れば作るほど、キャンドルを灯さなくなる。離れていく。お土産やプレゼントになっていってるなと感じたんです。そこから大きく考え方を変えて、キャンドルをもっともっと身近に使ってもらえる文化を作っていく必要性があると考えました。

香りや音楽、キャンドルで、究極のチルアウト(自分の好きなことをのんびりする)空間を提案していきたい。音楽とライト、お酒で覚醒して気分が上がるクラブとは真逆。
「お茶を飲んで、良い香りをたいて。音楽を静かに聴きながら、ライトはキャンドル」というシーン。一つのナイトカルチャーを作っていきたいです。

そのために勉強しないといけないことはたくさんあります。利益どうこうよりもシーンを作らないといけない。

今年度からは第三章。「もう一回、新しいことやるぞ!」と決意を新たに、吾北村に店舗をリニューアルオープン(2020年4月27日)します。これからの新しいチャレンジに、ワクワクしています(笑)


編集後記

匡史さんはとても人懐っこくて、軽快な印象です。キャンドル製作に日々真剣に向き合っていて、今も新しい作品やカルチャーを作るために挑戦を続けています。取材時に、印象的だったお話をご紹介させていただきます。

ウェディングも、セレブのレセプションパーティも、このルックスでジャケットを着てシゴトをしているんです(笑)
最初は、スーツ着てネクタイ締めて、会場に合わせて格好も寄せていこうと思っていました。けど、「いやいや、ちゃうろ。要はやることをやる方が身なりよりも大切だから、むしろやることやろう」と。自分らしさも出しつつ、デコレーションをしています。

身なりはこんなやけど、継続して発注してくれる。見た目どうこうじゃないんです。良いシゴトしていたらいい。カッコイイことしていたらそれでいい。

神戸でのシゴトは毎回勉強になりますし、新しい発見が常にあって楽しいです。昨年(2019年)も神戸のジャガーとランドローバー(イギリスの高級車メーカー)のクリスマスパーティのデコレーションをしました。「このジャガー3,000万するんすか!(笑)ここにあるんすか!」って(笑)
その状況は、ちょっとウケますね(笑) 自分でも「まさか!」という感じです(笑)

これも、匡史さんが日々のキャンドル作りに向き合い続けた結果。地に足をつけて積み重ねることで、見たこともない世界を見せてくれるのだと感じさせてくれます。